恋口の切りかた
真剣で斬り合うために、
特別な覚悟なんて──必要なのかな?
私には、よくわからない。
だからいつものように刀を構えて、
ふと、こちらを向いた虹庵が視界に入り込んだ。
虹庵は、
刀を構える私を
とても厳しい顔でじっと見つめていた。
……?
ざりっと、草履を動かして足下の感覚を確かめる。
「ひっ」
大男が小さく悲鳴を上げた。
そこに、
私は踏み込んだ。
低い位置から斬り上げる。
そのつもりだった──
──が、
「うわあああ!? 待った! 参ったあッ!」
大男が上げた声で、私は緊急停止する。
「……ハイ?」
耳を疑った。
だって、
そんな馬鹿な、
まだ何にもしてないのに──
「俺の負けだ。参った」
ぽかんと立ちつくす私に、
「それまで」
と、鎧武者が勝負の終わりを告げた。