恋口の切りかた
「そちらの相手は師範代だったかな?
しかしまあ、ほとんど不戦勝の形だし、そっちの小僧が相手でもボクは構わないぞ」

鎧武者は私を見下ろしてそんなことを言った。


……小僧じゃないもんっ。

私は再びむかっとする。


「随分楽しそうに刀を握るんだな。戦えなくて不服そうじゃないか」


え──?
楽しそうに……?


鎧武者の言葉に、私は首を傾げた。


「真剣勝負で笑いながら斬りつけるとは、余程腕に自信があるんだろう。
先程の師範代の言葉もあながち嘘ではなさそうだ」

笑って……いた?

「……笑ってましたか、私?」


私は鎧武者をまじまじと見上げて、

それから虹庵を振り返った。


虹庵は、やっぱりさっきと同じように、怖い顔で私を見つめていた。


「ガキのくせに、面白い奴だ」
と、鎧武者が言って、


私はまたまた、むかっとして、


変な格好の若者を睨みつけた。

「あの! 私はこれでも十七です! もうれっきとした大人ですッ」

男は目を丸くした。


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