恋口の切りかた
えええええええ──!?


あまりに突然のことに、私の頭の中は恐慌状態に陥った。


なに? この人なに?

いきなりなに言っちゃってるの──?



鎧武者は混乱している私の顔を覗き込んで、

「おお、照れているのか! 赤くなっちゃってカワイイな」

などと言った。


……違う!


へ、変態かな?
こういうのを変態さんって言うのかな?


私だけでなく、周りのみんなもあっけにとられている様子で、

ポカーンとしていて、



固まってしまった空気をぶち壊したのは、


「ふざけんなァッ! テメェ、人の妹の手握りしめて何言ってやがる!」


鎧武者の頭に
横手から跳び蹴りを食らわせた円士郎だった。


「ほごォッ!?」

下駄を頬にめり込ませて、見事にすっ転び雪に突っ込む鎧男。


「え、エン?」

円士郎はぐいっと私の腕を引っ張って、背中に引き入れ
私と変態鎧男の間に立って、

「遊水から道場破りだと聞かされて
戻ってきてみれば、こンの野郎──」

倒れた男を、更にゲシゲシと下駄で踏みつけた。


それから円士郎は凄い勢いで私に向き直った。

「留玖、平気か? 変なことされてねえだろうな?」

「う、うん、大丈夫」

その勢いに圧されつつ、私はこくこくと頷いて──


「いきなり何をするか貴様ァ!」

倒れ伏していた鎧武者が、憤怒の叫びと共にガバァッと立ち上がった。
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