恋口の切りかた
「黙れ変態野郎! それはこっちのセリフだ!」

「誰が変態だッ!」

「いきなり嫁に来いとか、どう考えたって変態だろうが!
おっかしな格好しやがって! びろうどのマントに鎧!? 何の見せ物だよそりゃ!」

「貴様こそ、何だその芸人みたいなふざけた頭は!
カブキ者を気取っているのか!?
ド派手な着物着やがって、そんな奴に格好がどうとか言われたくないぞ!」


互いにギャーギャー言い合う二人を、私はしげしげと眺める。


いつも一緒にいるため、
円士郎のほうは、もはや見慣れてしまったけれど、


確かに、今日の円士郎は

総髪を赤と黄色の紐で結い上げ、
どうやっているのか
髪を捻ったり散らしたりした派手な頭だった。

普段の稽古の時とかは普通に一まとめにしているだけなのだけれど、

遊びに行く時はいつも自分で結っていて、

日によって、
片側を少し残して垂らしていたり、
髪を全部下ろして女物の飾りを使っていたりと
髪型が違う。


更に、今日は柄物の派手な着流しの上に、
寒いからか女物の生地を使った羽織を引っかけていて──



まあ、何ていうか、



確かに鎧マントとどっちもどっちの格好かもしれない……。



そんなことを考えていたら、

「愉快なことになっているようですが、勝負には間に合いやしたかね?」

鎧武者と睨み合っている円士郎の後ろから、
番傘を片手に黒い長羽織を揺らして、遊水がこちらに歩み寄って来た。

うーん、遊水さんの格好は粋で品があるのになぁ……


私は何だか悲しくなった。

エンってこうして見ると完全にチンピラだよね……。

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