恋口の切りかた
「何なんだこの変態野郎は! 道場破りってのはこいつか?」


訊いてきた円士郎に、私はこれまでの成り行きを説明した。


円士郎は手にしていた刀の鞘で肩を叩きながら話を聞いて、
やがてニヤッとした。

「へェ、じゃあこいつが最後の一人ってワケか。上等だ!」

鞘に納めたままの刀を鎧武者に突きつけると、

「こっちからは最後の一人、俺が出るぜ」

円士郎は不敵に宣言し、肩越しに虹庵に視線を送る。

「構わねェよな、先生?」

やる気満々の円士郎を見て、虹庵は苦笑した。

「ああ、それで構わんよ。
今やうちの弟子の中で一、二を争っているのは間違いなく君と留玖の二人だ」

「──というワケだ」

円士郎は刀を下ろして鎧武者に向き直る。

「俺が相手になってやる、光栄に思え」

「なにィ……!?」

鎧武者は、もの凄く不服そうな顔になった。

「貴様、そんな滅茶苦茶な格好でここの門下なのか──くそ、ボクはそっちの美少女と勝負したかったのに」

「テメェみてえな奴と留玖を戦わせられるかッ!」


円士郎が喚いて、
二人は再び、何やら見えない火花を散らして睨み合い──


「では、判定は私が行おう」

本田ナニガシの腕の治療を終えた虹庵が、立ち上がってそう言った。
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