恋口の切りかた
「エン、気をつけて」

私は勝負に望む円士郎にそっと忠告した。

「あの人、格好はヘンだけど……最後を任されてるってことは、強いんだと思う」

「ああ。お前の話だと、
二勝二敗に持ち込んで、あいつで勝つってのが
あいつらの筋書きってことだったな」

「うん、油断はしないほうがいいよ」


私たちがそんなことを話している横では、


「頼むぞ、こちらは本田殿の腕まで失ったんだ」

「絶対に勝ってくれよ」


道場破りたちも口々に鎧武者に声をかけていた。


「いいか、頼むから──くれぐれも余計なことはするなよ」

「本当に頼むから普通に刀で戦ってくれ」

「普通にやればお前は強いんだからな」


……?

何だかよくわからない忠告の仕方だった。


「わかってるわかってる。任せておけ。
勝ちさえすれば、このボクがどう戦おうがボクの勝手だ」

鎧男は聞き流すように適当な相づちを打って、

「お前! わかってないだろ!?」

仲間に非難の声を浴びせかけられていた。


……なんだろ?

道場破りたちのやり取りは意味不明なまま、


円士郎と鎧武者は対峙した。
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