恋口の切りかた
「鏡神流──結城晴蔵が嫡子、結城円士郎だ」


円士郎が名乗り、


「ほう? お前が結城のバカ息子か」

鎧の若者は、眼鏡のようなモノの奥で目を細めた。

「成る程、巷の悪評どおりだな」


「で? てめェはどこの達人の名を使った偽名を名乗る気だ?
つうか──」

円士郎はニセモノ四人衆をあきれたように見やった。

「とりあえず中条流には謝っとけよ、お前ら……」


「フン、ボクはそいつらと違って勝負で偽の名を名乗るつもりはないね」


鎧男は鼻を鳴らした。


「そもそもこいつらは、自分の流派を汚さぬためにと──
今さら馬鹿馬鹿しい良心の呵責で偽名を使っているようだが……ボクにはその必要などないからな」


どういう意味だ? と円士郎が眉間に皺を寄せた。


「ボクは我流だ。流派はない」

我流?
私は少し驚いた。

最後の一人でまさか我流とは──


続けて、鎧武者は名乗った。



「ボクの名は、宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進だ」





──長っ!?
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