恋口の切りかた
七、円士郎と奇妙な仲間たち
【剣】
「てめえが一番偽名臭いじゃねェか!」
円士郎がツッコミを入れた。
「無礼な! 宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進は、正真正銘ボクの本名だ!」
うそォ!?
子供にこんな長い名前つける親って──いるのかな……?
「マジかよ……
普通、宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進なんて長い名前、
名乗られても覚えられねーぞ?」
「……しっかり覚えてるじゃないか。
凄いなお前、初対面で間違わずにボクの名を言えたのはお前が初めてだぞ」
二人はそんな会話を交わして、
「宮川──?」
「はて、どこかで聞いたかな」
虹庵と遊水が、小さく呟いた。
円士郎と鎧武者が鞘に手をかけ、鯉口を切る。
虹庵が何か引っかかったような顔のまま、首を一振りして、
「始め!」
と言った。
両者が同時に距離を詰める。