恋口の切りかた
ふん、と鬼之介が鼻で笑った。

「いらん心配だな。それにこれは眼鏡ではない。
このボクが作った『ごおぐる』というもので、目を保護するための発明品だ」


ごおぐる?

初めて聞く名前に私は首を捻った。


「あっそう」

と、円士郎が言って──


一足飛びに相手の懐に飛び込んだ。


鬼之介が振り下ろした刀をかいくぐり、

円士郎はくるりと手を返して


刀の柄を鬼之助の顔面──『ごおぐる』とやらに叩きつけた。


「うぐぅッ!?」

鬼之介がうめき、

牽制のために円士郎に向かって刀を一振りして、
顔を押さえてうずくまった。


「はーっはは、どうした!?」

再び距離を取った円士郎が笑った。

「ごおぐるとやらは壊れたぜ? 目を保護するんじゃなかったのか?」


あ、ホントだ、今ので割れてる。


「あービックリした、顔とごおぐるが強制合体するかと思った」

鬼之介はそんなことを言いながら、顔につけていたそれを外した。


円士郎に殴られて
思い切り押しつけられた跡が、くっきりと残っているものの──


「うおお、本当だ壊れとる!?
やはり水晶を削ったものでも強度はイマイチか……」


割れたごおぐるを手にして眺めつつ、ブツブツと呟く若者の顔は、

思いのほか整っていて、


普通に爽やかな好青年といった感の面立ちだった。
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