恋口の切りかた
「おのれ、よくもボクのごおぐる試作品第三号を……」

鬼之介は円士郎を睨みつけた。


……試作品の三号だったんだ、それ。


「許さんぞ、結城円士郎──!
ボクの目からごおぐるを外したこと、後悔させてくれる」

「何だそりゃ」

円士郎はせせら笑って、

「おう、やってみろや」

と言って、刀を構えた。


両者が睨み合い──


「その太刀筋──宮川って……
まさか、そいつァ──宮川家の例の次男坊か!」

声を上げたのは遊水だった。


知っている人だったのかな……?

遊水お得意の怪しい知識だろうか。


「ああ、そうか」
と、虹庵も何かを思い出した様子で言った。

「留玖や円士郎と同じくらいの歳の──ほら、源次郎君という子がいただろう」


え?

急に懐かしい名前が出てきた。

確かに昔、寺子屋に通っていた頃、円士郎と同い年の源次郎という武士の子がいた。


「ゲンジロウには勝ったけど」
「源次郎に!?」


初めて円士郎と出会った時の会話が、脳裏に浮かんだ。


源次郎の家は確か無想流槍術の道場をやっていて、

源次郎は──今はもちろん元服して名前も変わっているのだろうけれど──
結構強い槍の使い手に成長したと聞いている。


「この者は、源次郎君の一つ上の兄だよ」

虹庵はそう言った。
< 558 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop