恋口の切りかた
「源次郎のお兄さん!?」

私はびっくりした。


「え? でも──宮川家は槍の流派じゃ……」


鎧をまとったこの好青年風の男が手にしているのは、槍ではなく、

どこからどう見ても刀だ。


「宮川の次男坊の話ってのはね、」

と、遊水が口を開いた。


「幼い頃より卓越した武芸の腕に恵まれて、
槍術はもちろん、棒術、剣術……

何でもこなし──何にも熱中できなかった。

いくつもの流派を渡り歩いたが

結局、武芸には興味を持たなかったという変わり者の天才で──」


遊水は鎧武者と睨み合ったままの、円士郎を見た。


「──噂が本当なら、こいつはちょいとマズいぜ、円士郎様」


何がマズいのだろう。


「噂が本当ならね、宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進ってお人は──」

遊水は、スラスラとこの眉目秀麗な鎧武者の長い名前を口にして、

こう続けた。



「二階堂流──二階堂平法を修得してるってェ話なんですよ」



二階堂流──?

私は聞いたことがない流派だ。
何、それ?


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