恋口の切りかた
円士郎は鎧武者と睨み合ったまま動かない。

随分と長い降着状態が続いている。


動かない──のではなく……



「──動けねえ……」



掠れた声で、円士郎が呟き、

私は気がついた。



円士郎の額には、びっしりと汗が浮いていた。



「何だこりゃ……体が──動かねえぞ……!?」



円士郎は刀を構えて、鬼之介を睨み据えたまま、微動だにせずそう言った。


動かないって──

どういうこと!?




「まさか──」


虹庵が、

動けない円士郎と、
円士郎を睨みつけている鬼之介とを見て、


息を呑んだ。



「これは──『心の一方』か!?」


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