恋口の切りかた
と言っても、あいつが簡単に捕まるようなヘマはしなさそうだしな。


それに、仮に根っからの犯罪者だったとして──


「まあ、別にいいか」

俺が軽い調子で言うと、

「いやいや、別に良くないだろ! 気にしとけよ、そこは!」

語る気のない鬼之助はそんなことを言った。

「ん~? 俺もあいつのことは気に入ってるしな。
何しろ、ヤクザを鼻であしらうような奴だぜ」

「そういう奴を気に入るんじゃないッ!」

鬼之助はゼイゼイと大きく肩で息を切らし、

「はァ……まあ、確かにあの男なら、ヤクザなんて軽くあしらえるだろうよ」

と脱力したように言った。


「えー気になるなあ?」

留玖がかわいい顔で鬼之介を覗き込んで首を捻った。

「極道相手に操り屋やってるってことくらいなら、俺も知ってるけどな」

俺が言うと、鬼之助は「操り屋」と小さく繰り返して、

「今はそんなことをしているのか、あの男は……」

とゲッソリした様子で呟き、




「貴様、友達は選べよ……」


俺に向かって大きな溜息を一つ吐いた。

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