恋口の切りかた

一、狸穴-まみあな-訪問


 【剣】

宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎……たちは、
町の居店で飲んでいて知り合った他人同士で、この道場破りをやっていたらしい。

皆、他の者の素性については互いに詳しく知らないそうだ。


二勝二敗に持ち込んで最後の一人で三勝するという作戦は、鬼之介の力に頼っていた部分が大きくて、

円士郎に言われて鬼之助が手を引いたことで、仲間たちも道場破りをこれ以上続けることはできなくなった。


大怪我をした鬼之助は、あの後
父上の許しが出て、しばらく結城家の空き部屋に置いてもらって、虹庵の治療を受けていた。

父上も円士郎や私と同じで、鬼之助のカラクリをいたく気に入った様子で──

自滅した話を聞いて大笑いしていた。



「貴様、考えてみたらおつるぎ様の兄上ではないか!」

鬼之介は円士郎にそんなことを言って、

「是非、妹君をボクにくれ!」

「ふざけんな!」

思い切り蹴り飛ばされたりしていたけど……。


「てめえ、絶対に留玖に近寄るなよ! 留玖、お前もこいつには近づくな!」


完全に害虫扱いだ。

さすがに鬼之介が少し気の毒だな、と思いつつも、


私はなんだかそんな円士郎の態度が嬉しくて

どきどきして──


それから急いで感情を打ち消そうとする。

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