恋口の切りかた
何を──期待しようとしてるんだろう。

円士郎は……エンは……
私が妹だから、
大事に思って
優しくしてくれてるだけ。


そう思おうとしたら、


「おつるぎ殿には好いた殿方がいらっしゃいますか?」


風佳の言葉が、耳の奥で囁いた。



ダメだよ……。



彼に、

こんな感情持っちゃいけない。
こんな思い抱いちゃいけない。

だって──私は……


本来彼の隣にいることすら、許されない身分なのだ。


今、ここに置いてもらえている。

それだけで、感謝しなくてはいけない身なのに──



「そう冷たいことを言わずに、兄上」

「誰がてめえの兄上だ!」


私の心の中を知らない二人はそんなやり取りをして、

「兄上って──てめえ何歳だよ?」

「今年で二十二だが」

「やっぱりてめえのほうが年上じゃねえかよ!」

円士郎に鬼之助がまた
げしげしと蹴られていた。

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