恋口の切りかた
私と円士郎は鬼之介を送って、彼の長屋を訪れ──

刀剣に槍に鎧に鎖鎌に……
見たこともない様々な武器がところ狭しと並んだ長屋は、

何て言うか、武器庫みたいだった。


あの、鳥英さんという絵師の家も変なものがたくさんあったけれど、

鬼之助の長屋には、武器の他にも

びいどろで作られた球のようなものや、
それを線で繋いだ箱のようなものや……

私には見たこともないどころか、それが何なのかすらもわからないような
正体不明の物体で埋め尽くされていた。


これが、彼の発明品とやらなのかな……。



円士郎から、伊羽邸を訪れると聞いた鬼之助は、
何とも言えない表情を浮かべて、

「そうか。中に会ったらよろしくな」

と言った。


「アタル?」

円士郎が聞き返して、

「ボクの下の弟の元服後の名だ」

鬼之助はそう言った。


あ、源次郎の?


「中という漢字一字の『あたる』」

『──短ッ!?』


私と円士郎は同時に叫んだ。


「兄が鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進で、弟が中なんて極端過ぎだろ」

円士郎がもっともな感想を口にした。

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