恋口の切りかた
「風花(かざばな)か」

花の季節も近づいた午後の日差しの中にキラキラ輝く粉雪を見て、円士郎が小さく呟いて


す、っと彼の手が伸びて、


私の手を握った。



──え?

どきん、として円士郎の顔を見上げたら、


「寒そうだな。手、こんなに冷たくなっちまってるじゃねーか」

円士郎はそう言って、自分が巻いていた襟巻きを私の首に巻いてくれて……



そのまま、私の手を握って歩き出した。



え? ……え?


ほっぺたが熱くなるのを感じながら、私が戸惑っていると、

「どうかしたか?」

と、円士郎が私の顔を覗き込んだ。


私はふるふると首を横に振って、

円士郎の手から伝わってくる温もりを感じて


「あったかい……」

何だか嬉しくて、えへへと笑った。
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