恋口の切りかた
私にはエンしかいないんだよ──


昼間聞いた留玖の言葉が蘇った。



そうだ、留玖には、俺しかいない。
これまでずっと一緒にいたんだ、これからだってずっとこいつのそばにいたい。

俺しか、彼女のそばにいてやれる奴はいないんだ──


俺は強くそう思って、

留玖の泣き顔を見て、

ただひたすらに彼女が愛おしくて──



「ひどいよ……エン……エンがこんな風に優しくするから、だから、私──

もう、こんな風に優しくしないでよっ!」



悲鳴のように叫んで、走り去ろうとする留玖の手を


今度はつかまえた。



逃げようとする留玖を


力任せに引き寄せて、








抱きしめた。
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