恋口の切りかた
「何やってんだよ俺は……」

思わず溜息を吐いて、その場にしゃがみ込んだ。



とにかく、これでハッキリわかった。



俺が留玖を好きだと思う気持ちと、
留玖が俺に対して抱いている気持ちは、

違う。


そういうことだろう。



私にはエンしかいない──

留玖のセリフは、俺にはことごとく都合良く聞こえた。

留玖も同じように俺のことを思ってくれているんじゃないかと、勘違いするのに十分だった。


「でも、やっぱり違うのかよ……」


どうする──?


また、迷う気持ちが起きた。


留玖にここまではっきり拒絶されて、それでも俺は風佳との婚儀を破談にするこの無謀な勝負に挑むのか?

武家の約束事に私情をはさめないことを知る者なら、
一度取り交わした家同士の婚儀の決め事を個人的な感情で覆そうというのが、どれほど馬鹿な真似かよくわかるだろう。

下手をすれば、親父殿を激怒させてその場で切腹を命じられかねない。


留玖のことが好きなら、風佳を正妻にした上で──留玖は妾にすることだってできる。

この「抜け道」を使えば、それだって可能なのに。




あークソ、どうするんだよ俺。

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