恋口の切りかた
親父殿はそう言ったきり、黙った。


嫌な沈黙だった。


親父殿との会話で、こういう間があくことは初めてで、

俺は次にどんな言葉がやってくるのか想像しようとしたが、さっぱりわからなかった。


俺が沈黙と、
俺に注がれている厳しい視線とに
いい加減耐えられなくなった頃、

「お前は今の話を風佳殿の前でしたか?」

と、親父殿が尋ねた。


「は? いえ」

質問の意図がわからないまま、俺は首を横に振った。

「彼女は何も知らないはずですが」

昨日、冬馬にすがりついて泣いていた許嫁殿を思い起こしながら俺は言って、


次の親父殿のセリフに耳を疑った。




「風佳殿が自害しようとしたそうだ」



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