恋口の切りかた
俺の問いに対して、遊水は
この男にしては珍しく表情を曇らせた。

「ああ、まあちょっとな……」

「なんだ、珍しいな。随分と浮かない顔じゃねえか」

「そんなにいつも俺は浮かれた顔をしてんのかい?」

遊水は苦笑気味に言い返しつつも、どこか沈んだ空気を漂わせている。

「ひょっとして、鳥英と喧嘩でもしたのか?」

毒の治療で厄介になって以来、どうも遊水は鳥英の所に入り浸っているようだった。

俺が普段のお返しとばかりにからかうと、くくく…と遊水は低く笑った。

「円士郎様に心配されちゃおしまいだ」

この野郎……!
まあ、確かに今の俺は他人の色恋を心配できるような状態じゃないが。

「……あんたにとっちゃ、鳥英はたくさんいる遊び相手の一人なんだろうけどよ」

俺は、あの少し変わった美人女絵師を思い浮かべた。
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