恋口の切りかた
「鳥英は俺の大切な友人だ。あんまり傷つけたりすんなよ」


遊水には女がたくさんいる。
どの女も大事にしているようで、遊水はどの女に対しても本気ではない。

俺には、一人の女に縛られるのを嫌っているように見える。


「友人、かい」


俺が釘を刺すつもりで言った言葉に、遊水はいつになく険しい目で俺を見た。


「安心しな。残酷な円士郎様とは違って、俺は女を泣かすような真似はしねえよ」


随分と棘のあるセリフだった。

俺は──鳥英が俺に対して抱いている感情には無頓着だった。
しかも遊水は続けて、

「気マズくても、おつるぎ様とはちゃんと話をするんだな。逃げてても始まらねえぜ?
なァに、話を聞いた分じゃあ、本気で嫌われたってことはまずねえだろうよ」

こんな風に、さらりと留玖の話をしたので──

だからこの時、
遊水が口にしたのは、今の留玖と俺の状態に対する嫌味なのだろうと、俺はそう思っただけだった。
< 706 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop