恋口の切りかた
辺りには、今の爆音を聞きつけて野次馬が集まりつつあった。

群衆にチラと視線を送って遊水は「話は中でしようかい」と言い、俺たちは火薬の臭いが立ちこめる鬼之介の長屋に入った。


「お前、何の発明で爆発なんかさせてんだよ」

部屋の中は相変わらず武器で埋め尽くされ、火薬が爆発したせいかそれらが足の踏み場もない程に散乱している。

俺の質問に鬼之介は胸を張り、おそらくは爆心地と思われる──真っ黒に焦げた鎧を杖で指して、

「貴様に当たらなかった『飛空撃賊震天雷砲』の改良をしていたのだ!」

と得意そうに言った。


「ま、まあ今のは、ちと火薬が多すぎたようだがな」


これ、鎧を着てたら死んでたんじゃねえのか、コイツ……。


あきれている俺の横で、
遊水は鋭い視線を部屋の中に這わせ、

「ふん、どうやら焼け焦げた女の死体がゴロリってことはなさそうだ」

と鼻を鳴らした。


──死体がゴロリ?


「どういう意味だ?」

物騒なセリフに俺と鬼之介は思わず顔を見合わせた。


遊水はニコリともしない白い顔を鬼之介に向け、緑色の目を細めた。


「鬼の字の旦那、あんた最近──自分の発明のために若い女をさらってきて、
殺してバラバラにしたりしてたんじゃねえのかい?」


「な──」

俺は思わず鬼之介を見て、


「はァ──ッ!?」

鬼之介は、隈に縁取られた目をまん丸にした。

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