恋口の切りかた
鬼之介が驚いた顔をこちらに向けた。


「根拠は?」

遊水が訊いた。


「こいつがやってねえって言ってるからだ」

「……断言するねェ」


遊水は確信に満ちた俺のセリフを聞いて

困ったような
感嘆するような

そんな複雑な表情を作った。


「あの医者の先生の言うとおりだぜ。
エンシロウサマ、あんた確かに──気を許した者に対して甘すぎだ。

だがまァ──」


遊水はあっははは、と声を立てて笑った。


「どうやら鬼の字の旦那はシロのようだ。
いやァ、安心したぜ」

「……は?」


ポカンとなる鬼之介に、遊水は


「クロにしちゃァ、言い訳に説得力がなさすぎだからな」

と、悪意たっぷりの──獲物をいたぶるような笑みで言った。


どうやら途中からは、必死の鬼之介の反応を見て楽しんでいたようだった。

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