恋口の切りかた
ここ最近、城下でいくつも奇妙な死体が見つかっているのだと遊水は言った。


「証拠隠滅のつもりか、真っ黒になるまで焼かれた仏さんだが──
──どれも若い女だ。

こいつがみんな、手足をバラバラに切り刻まれ、
どういうワケだか、胴体からは『中身』がゴッソリ抜き取られてるときた」


うげっ!?
なんだそりゃ……!?


「鬼の字の旦那の言う通り、こんなのは人間の仕業じゃあない、鬼畜生の所業だ」

「ちょっと待てよ!」


俺は慌てて口を挟んだ。

そんな事件があれば、絵草紙屋がこぞって書き立ててそうなもんだが──


「最近、城下でンな奇怪な事件なんてあったか? 俺はそんな話、たった今知ったぞ」

「ボクも初耳だな」


鬼之介も怪訝そうに首を捻った。


「そりゃそうだ。
どこの絵草紙もこの事件は取り上げちゃいないだろうさ」


遊水は事も無げに言った。


「何しろ──この俺が裏で操って、
この事件が人の口に上らないよう、立てられぬ戸を立ててるんだからな」

「な──」



俺と鬼之介は絶句する。

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