恋口の切りかた
それから

円士郎は青い顔をしたままの冬馬に大丈夫かと声をかけて、



私は遊水のおかげで見ていないから平気だったけれど、

どうやらまともに今の光景を目撃したにも関わらず、
結構平然としている円士郎や鬼之介に冬馬は衝撃を受けた様子で、

「武士として……私は己が不甲斐ない」

などとしょげて、一人にして下さいと言って歩いていってしまった。



──ハッ!?

結局、冬馬の誤解解けてないよ!?



円士郎と二人になって、
気まずい沈黙が落ちて、


焦りながら──

私は何だか、
さっきまでより肩が少し軽くなっているような気がした。


それは、目の前で自分の悩みを吹き飛ばすような
遙かにとんでもない事態が起きたからなのか、

それとも、あの金魚屋がかけてくれた言葉のおかげなのか……


一人で深刻に……なりすぎていたのかな?


なんて思っていたら、



「確かに──逃げてても始まらねーか」

円士郎がそんな風にボソリとこぼし、
大きく息を吸って吐いた。


キッ、と睨みつけられるように見据えられて、私が緊張すると、


「留玖、俺はもう屋敷に戻るけど……お前は?」

「あ、私も……」

「よし、一緒に帰ろうぜ」


円士郎はそう言って、

私たちは二人で歩き出した。
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