恋口の切りかた
木刀を木の棒と呼んでいたあの頃──、


刀丸はいつも、相手の体の「隙(すき)がある部分」を打ち据えていた。
体のどこでも、特にかまうことなく。

俺も何度か刀丸に、動きを封じる牽制(けんせい)のために棒きれを突きつけられたことがある。

その時も彼は漫然と、「体のどこか」に棒の先端を突きつけてきた。


だが──


河原で平司に木刀を突きつけたとき──



刀丸は迷うことなく

平司の「喉元」に

「切っ先」を突きつけた。



それが何を意味していたのか──

俺は彼に何を教え込んでしまったのか──

木の棒を木刀に持ち替えさせたのがどういうことか──
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