恋口の切りかた
「人形斎って誰?」

再び二人きりになって、私は円士郎に尋ねた。

「ああ、そう言えば今日鬼之介の所では話すの忘れてたな。
ひょっとするとこいつが、『天照』と『月読』を作って人を殺してる張本人かもしれねえって奴だが──芝居小屋か……芝居小屋、芝居……」


円士郎はぶつぶつと呟き、やがてはっとしたように、


「──繋がったぜ」


と、言った。


「え?」

「芝居小屋だ……!」

「何のこと?」

「あの狐の蕎麦屋だ」


私は恐ろしい記憶が蘇ってびくりと身を震わせた。


「どこかで見た記憶があると思ったら……
小さい頃、俺が祭りで見た芝居小屋の仕掛け人形にそっくりだったんだ……!」

「お芝居の仕掛け人形?」

「ああ。留玖、怖がらなくてもあの蕎麦屋は、ひょっとすると人形だったのかもしれないぜ」
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