恋口の切りかた
【刀】
おれが、あの村の刀丸でいられた最後の日も、
漣太郎とおれはいつものように木刀を交えて遊んだ。
「お前、大きくなったら武芸者になれよ」
別れ際に彼が言った言葉が記憶に残っている。
「武芸者かあ……」
「戦国の世は終わっちまったけどよ、今の世だってお前くらい強けりゃ、きっと農民でも取り立ててもらえるぜ」
「うーん、おれも武芸者になれるのかなぁ……」
「なれるって! オレもエラくなって、殿様や江戸の将軍様に、お前のこと推挙してやるよ」
──うーん。
出会ってから三年以上一緒にいて、ようやく最近変だと気がついたのだけれど。
「でも、おれは……」
どうも漣太郎は、おれのことを一つ勘違いしているようだった。
何度も言おうと思ったのだが──
「なんだよ?」
「……いや、考えとく」
言おうかどうしようか迷って、
結局、おれはもごもごと黙った。
このことを知ったら、漣太郎に嫌われるかもしれない。
そう思うと、どうしても言い出せなくて……
この日も、おれはそのまま漣太郎に別れを告げて、すっかり暗くなった村への道をいつものように帰り始めた。