恋口の切りかた
白い息をはき出しながら、いつものように家の戸を開けて──

しかし、

そこには、いつものような家族の笑顔はなかった。



見知らぬ大きな男が一人、

おれの家の中に仁王立ちになっていた。



ぐるり、と
男がおれを血走った眼で振り返った。

「これもここの子供か?」

押し殺した声で、男がたずねる。

「は、はい。そうです」

囲炉裏のそばで、おれの兄弟たちと身を寄せ合うようにして震えていたおとうが答えた。

横ではおかあが、オイオイと声を上げて泣いている。


その見知らぬ男でも、おとうやおかあでもなく、

おれの目は、男が手にした抜き身の刀に釘づけになっていた。
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