恋口の切りかた
私の頭の中で、「近づいてはいけない場所」の上位にその水神様の神社が順位づけられた。
「そのような話でしたらわたくしも聞いたことがございます」
続いて風佳までそんなことを言い出して、
「町外れのススキ野にある、古井戸の話なのですけれど」
古井戸!?
これも、その響きだけで怖い。
「そのススキ野のいずこにあるのかも定かではないのですが、何でもその井戸はこの世ならざる場所に通じているのだとか」
風佳は可愛らしい声で不気味な内容を語った。
「もしもその涸れ井戸の近くをうっかり知らずに通ってしまうと、この井戸に棄てられた人の骨が白い手を伸ばしてきて、この常世ではない隠り世に引きずり込まれてしまうのだそうです」
…………。
私は固まった。
「おい……大丈夫か、留玖?」
また卒倒でもするんじゃないかと心配したのか、円士郎が私の顔を覗き込んだ。
「大丈夫じゃない……ふええ──」
……ススキ野なんか行かない!
金輪際近づかない!
私は固く誓った。
ここも「近づいてはいけない場所」に追加した。
「その話なら私も聞いたことがあるな」と言って、鳥英が遊水をちらりと見た。
「確か遊水から聞いたぞ」
「あら。わたくしもそう言えば金魚屋さんからお聞きした気がいたします」
風佳もそう言って、
「おや、そうでやしたか?
そいつはしまった。今夜にとっておけば良かったですねェ」
遊水が残念そうに苦笑いした。
「そのような話でしたらわたくしも聞いたことがございます」
続いて風佳までそんなことを言い出して、
「町外れのススキ野にある、古井戸の話なのですけれど」
古井戸!?
これも、その響きだけで怖い。
「そのススキ野のいずこにあるのかも定かではないのですが、何でもその井戸はこの世ならざる場所に通じているのだとか」
風佳は可愛らしい声で不気味な内容を語った。
「もしもその涸れ井戸の近くをうっかり知らずに通ってしまうと、この井戸に棄てられた人の骨が白い手を伸ばしてきて、この常世ではない隠り世に引きずり込まれてしまうのだそうです」
…………。
私は固まった。
「おい……大丈夫か、留玖?」
また卒倒でもするんじゃないかと心配したのか、円士郎が私の顔を覗き込んだ。
「大丈夫じゃない……ふええ──」
……ススキ野なんか行かない!
金輪際近づかない!
私は固く誓った。
ここも「近づいてはいけない場所」に追加した。
「その話なら私も聞いたことがあるな」と言って、鳥英が遊水をちらりと見た。
「確か遊水から聞いたぞ」
「あら。わたくしもそう言えば金魚屋さんからお聞きした気がいたします」
風佳もそう言って、
「おや、そうでやしたか?
そいつはしまった。今夜にとっておけば良かったですねェ」
遊水が残念そうに苦笑いした。