恋口の切りかた
【円】
きゅっ、という何だか笑える可愛い声が聞こえて、くたりと俺の腕の中で留玖の体の力が抜けたので俺は慌てた。
気を失っちまった……!
周りを見回すと皆、凍りついた表情で天井に釘づけになっている。
幸いにも留玖の様子に気づいた者はいないようだった。
さすがに留玖の名誉のためにもここは助けてやらねえと……
俺は他の連中に気づかれないように留玖の体をひっくり返して背を自分の方に向け、両肩を持って膝を脊椎に当てて活を入れてやった。
小さくうめいて留玖の体に力が戻り──
そのまま留玖は俺にしがみついてわあわあ泣き出した。
まあ、風佳も冬馬にしがみついて似たように泣いているし、皆の前で気絶した状態をさらすよりはマシだろう。
しかし、これはまた
手の込んだ真似を──。
フダで埋め尽くされた天井を見上げて俺はやや唖然とした。
さすがに一瞬、俺も本気でビビったぞ。
操り屋などで人心を手玉に取る商売をしているということは、このテの話が一番上手いのは間違いなく遊水だ。
そう思った俺は、何が何でも彼を参加させたかったため、しばらく姿を現していなかった操り屋の都合に徹底的に合わせて今回の催しを企画した。
ううむ、久方ぶりにうちの屋敷にやって来た操り屋は、何か仕掛けてくれるのではないかと思ったが……
ちと悪ふざけがすぎるぞ。
俺はいやいやをする留玖をなんとか引き離して、これまた天井を見上げたままで固まっている鳥英に預け、
「おい、遊水」と、ニヤニヤしている操り屋に小声で話しかけた。
「ちょっとやりすぎだぞ、これは。人んちにこんなフダまで勝手に貼りやがって」
「は?」
すると笑っていた遊水が訝しそうな表情になった。