恋口の切りかた
「どうした鬼之介? もう行くぞ」

「い、いや……ボクはもう少しここにいるぞッ」

鬼之介は何やら慌てた様子でそんな答えを返してきた。

はあ!?

「何言ってんだテメエ? 薄気味の悪ィ部屋に一人で残る気か?」

「う、うむうむ。度胸試しだッ」

「……オイこら」

天井を見てから一言も発していないと思ったら……

「てめえまさか、武士のクセに腰が抜け──」

「なななな何のことかなッ」

俺は大きく溜息を吐いて、こういうことにも通じていそうな忍の男を見た。

「……宗助、こいつの腰を立たせてやれ」

「──は」


こうして、

留玖や鬼之介にどうやら心の傷を残した様子で俺たちは怪談の時間を終え、そしていよいよ今夜の本番。

肝試しに突入することになった。
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