恋口の切りかた

 【剣】

私は既に涙でほっぺたがヒリヒリしていた。


怪談がこんな終わり方をして、これから肝試しだなんて信じられない!

私は円士郎に断固反対して、もうやめようと言ったのだけれど──


「こんくらいじゃねえと盛り上がらねーよ」

とか、

「呪いにかかるだァ? 武士がそんなもの怖がってたらダメだろうが。
だからこそ度胸試しにちょうどいいんじゃねーか」

とか、

「俺がやるっつったらやるんだよ! つべこべ文句は言わせねえ!」

しまいにはそんなことを言われて、私の抵抗は無駄に終わった。


うう……エンはこう言い出したら、何言っても無駄なんだもんなあ。


膝を抱えてしくしく泣いていたら、

肝試しで回る場所は、今の怪談で出た城下の七不思議の場所にしようなどと円士郎は言って──


私が「近づいてはいけない場所」に定めた矢先だと言うのに、早くもそこを訪れることが決定してしまった。


夜に女の一人歩きは危険だということで、風佳、鳥英、私の三人は誰かと組んで二人で回ることにしようと、円士郎は何だかにやついた顔で提案した。

私が生まれて初めて、女の子で良かったと心から思っていると──

「姉上は一人でも危険などないとは思いますが……と言いますか、姉上が危険だったら我々のうち一人歩きをして安全な者などおりませんよ?」

冬馬がとんでもないことを口走った。

私は生まれて初めて、剣術なんかやるんじゃなかったと後悔した。
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