恋口の切りかた
【円】
怖がりな留玖と二人っきりで七不思議の場所を回る。
鬼之介に邪魔されそうになったが、俺は何とかこんな千載一遇の機会をうまく手に入れて──
目論見どおり、手は繋ぎたい放題……と言うか、留玖のほうから腕にしがみついてきてくれるし、
ちょっといい雰囲気になれた気もして、この企画をして良かったと思いながら最初の浄泉寺に辿り着いて
草の匂いに包まれながら荒れ果てた夜の境内を進み、フダが置いてある予定の本堂が見えてきた時のことだった。
本堂の中で、小さな炎が揺らめいた。
「いやあああ──っ!? 人魂っ」
留玖が悲鳴を上げて俺にしがみついた。
「落ち着けよ留玖。あれは人魂と言うより……」
赤い小さな灯火は、動いているのか揺らめきつつ視界の中をちらついて──
俺は眉をひそめる。
人魂と言うより、
視界を動き回る光は、誰かが手にした灯りに思えた。