恋口の切りかた
本堂の中に誰かいるのか?
住職が死んでからここは無人という話だったハズだが。
どう考えても手入れの為されていない荒れ放題の周囲を見渡して、俺は首を捻る。
この有様は、どう見積もっても誰かが住んでいるとは考え難い。
ひょっとして、先に行った冬馬たちがまだここにいるのだろうか。
いやいや、そんな馬鹿な。
と、考えを振り払う。
たっぷり時間を置いて出発したのだ。
彼らはとうに次の龍神の神社に辿り着いていておかしくない。
だとすると──こんな深夜に、こんな荒れ寺で
誰が何をしているのか。
まさか俺たちのように肝試しをしているわけではあるまいし。
「留玖」
俺は少し緊張しながら、俺にしがみついてくる少女に声をかけた。
俺の声の調子から何かを悟ったのか、怯えていた留玖もやや真剣な表情になって顔を上げた。
「用心しとけ。ここにいるのは死体じゃなくて、生きた人間かもしれねえ」
俺は刀に反りを打たせて提灯をその場に置き、未だ俺の袖をつかんだままの留玖と一緒にそろそろと本堂に近づいた。
住職が死んでからここは無人という話だったハズだが。
どう考えても手入れの為されていない荒れ放題の周囲を見渡して、俺は首を捻る。
この有様は、どう見積もっても誰かが住んでいるとは考え難い。
ひょっとして、先に行った冬馬たちがまだここにいるのだろうか。
いやいや、そんな馬鹿な。
と、考えを振り払う。
たっぷり時間を置いて出発したのだ。
彼らはとうに次の龍神の神社に辿り着いていておかしくない。
だとすると──こんな深夜に、こんな荒れ寺で
誰が何をしているのか。
まさか俺たちのように肝試しをしているわけではあるまいし。
「留玖」
俺は少し緊張しながら、俺にしがみついてくる少女に声をかけた。
俺の声の調子から何かを悟ったのか、怯えていた留玖もやや真剣な表情になって顔を上げた。
「用心しとけ。ここにいるのは死体じゃなくて、生きた人間かもしれねえ」
俺は刀に反りを打たせて提灯をその場に置き、未だ俺の袖をつかんだままの留玖と一緒にそろそろと本堂に近づいた。