恋口の切りかた
途中で置いてきた提灯を回収して、寺の境内から表の道に走り出たところで、しゃがみ込んでわあわあ泣きじゃくっている男姿の少女を発見した。

「留玖、落ち着け。大丈夫だって……」

「大丈夫じゃない!」

俺が声をかけても留玖は一向に泣きやむ気配がなかった。

「もうやだあ……! 帰るゥ……」


確かに、今のはな……。

目玉の抜け落ちた尼僧の白い顔を思い出して、俺も小さく身震いする。


俺ですら、背筋が凍ったのだ。

怖がりの留玖にはちょっと──どころか、かなり刺激が強かったに違いない。


俺は手の中に握りしめていたフダを見て、今の出来事が夢ではなかったことを確認した。


冬馬や風佳たちは大丈夫だったのだろうか。


うーむ。
この後、鬼之介もここに来る予定になっているが。

また腰を抜かして、一人で戻れなくならなければいいがな。


何はともあれ、これでフダを一枚回収である。

次は、丑の刻参りの鬼女が出るという神社だった。
< 960 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop