恋口の切りかた
【剣】
もうやだ! やだやだ!
円士郎のばか!
どうしてこんな場所に連れてくるの!
人間の顔から、目玉がぽろりと落ちた。
有り得ない!
本当だったんだ。
浄泉寺の動く死体の話は本当だったんだ……!
狐の屋台の比ではなかった。
あんな凄まじいものを見たら、もう当分一人で眠ることなんかできそうにないと思った。
「留玖、大丈夫だって」
何の根拠があるのか、無責任な言葉をかけて肩に手を置いてきた円士郎を振り払って立ち上がって、
「帰る! もう帰るゥ……帰してよぉ……」
恐慌に陥って泣き叫んでいたら、
突然、後ろから抱きすくめられた。
「落ち着け、留玖」
耳元で円士郎の声が囁いた。
「大丈夫だ……俺がついてる」
そんな声と共にぎゅっと、円士郎の腕が私を抱きしめた。