恋口の切りかた
円士郎と一緒にいて、こんなにどきどきするなんて……

私のこの気持ちは……

熱に浮かされたような頭で、私は今さらのように絶望的な気分で自分の心を覗き込んで、


大急ぎで扉を閉じた。


見なかったことにしようと強く念じた。

そうして、いつの間にかすっかり怖くなくなっていることに気がついて、


あんな恐ろしいモノを見た直後でも、私の心は既に円士郎で埋め尽くされているんだ、と思った。

この人は、私の恐怖すらも、たちまち違うどきどきに塗り替えてしまうんだと。


気づいてから、何でこんなことに気づいちゃったのかなと再び絶望的な気分になった。



そんなことを考えながら、円士郎に引っ張られて歩いていたら、

「おっしゃ。着いたぜ」

円士郎が楽しそうに言って、


私にはどこをどう歩いたかの記憶もないのに、

私たちは龍神様の神社の前に立っていた。
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