【短】涙が出るほど好きだった
季節は冬。
大きな音をたてながら頬を横切る風に負け、ついマフラーに顔をうずめた。
意図的にハァーっと息をはくと
一瞬にして真っ白になって空に消えてく。
憂鬱になりつつただそこに立っていると靴箱に待ち合わせていた彼が来た。
「奏くんっ!」
「…柚姫。」
彼がこっちに来るなり、すぐに声をかける。
あたしの名前をよぶ淡い声色が愛しい。
奏くんと付き合って一ヶ月。
幸せすぎる毎日にあたしは恐ささえ感じるほど。
「奏くんっ!今日はねー優子ちゃんが…」
「アハハッ。優子ちゃんいつも大胆だなー。」
…三年間片想いを続けて
やっと実った恋。
隣で笑ってる奏くんの笑顔をいつも大事に眺める。