【短】涙が出るほど好きだった
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「奏くんッ!」
「柚姫!?」
「珍しいな、柚姫が早いなんて。」
いつも奏くんがたってる場所にあたしがたち、
あたしから手を握って歩き出す。
奏くんはちょっと不思議そうな顔をしたけどすぐに笑って、あたしの手を握り返してくれた。
「なんかあったの?」
「別に♪」
そういってまた意地悪そうに笑う。
「奏くん!そういえばね……。」
奏くん…。
それまでうきうきしていた気分が急激に沈んでいくのが分かった。
―また、奏くんの視線はあたしにない。
もちろん瞳の先には香織さん。
愛しそうな視線は変わらない。
「奏くん…」
「………。」
「奏くん!!!!!」
「え、ごめん柚姫、何?」