【短】涙が出るほど好きだった
「じゃ、ね。奏。」
いきなりこっちに向かって歩いてくる香織さん。
もちろん隠れる暇もなく
ご対面。
「あ、あの…えっと…。」
キッとした目線であたしをにらんだあと
不機嫌そうに軽くお辞儀をして彼女は去っていった。
でも今は香織さんのことなんて気にしている暇はない。
―奏くん…大丈夫かな…?
「うッあぁ……。」
奏くんは泣いていた。
ずっと見ていたはずの顔は
今まで見たことないくらいの苦しい表情。