人形姫~Where is Princess's mind?~
けど、


詩音は笑顔で手を振っていた。


――…嘘みたい…。


“あっ、梨佳のサンダル…”


私の後ろで小さい子ども声がした。


振り返ると、その子はどんどん海に入って行ってしまう。


“まって!危ない!!”


私の声も虚しく、その子は沖へと入って行く。


“キャ―――”


“梨佳っ”


母親と子どもの悲鳴が響いた。


“誰か助けて”


母親は泣きながら頼むけど、誰も動こうとはしない。


なぜなら、みんな自分の身がかわいいから。


だから、私が入ろうとしたんだ。


“あんた、私のサーフボード持ってて”


“でも…”


“あんたバカ?制服で海入ったって溺れるだけだから”

< 17 / 156 >

この作品をシェア

pagetop