カゴの鳥
「そう言うことは試合前に言うものだよ」


「だって……」


僕が言いかえそうとしたら睨まれた。


……先輩ちょっと怒ってる


「だって、なに?」


「…だって自分の弱点を他人に言うなんて……」


僕はそうやって自分自身を守ってきたのだから…


「はぁー」


また、ため息つかれた……


今度は僕の目をしっかりと見てこう言った。


「違うでしょ、利都ちゃん」


「……ちがう?」


「そう、何のためのコンビだと思ってるの?」


「……う」


「助け合ってこそでしょ?言ってくれたらフォローするし」


「……ごめんなさい」


僕は先輩を見ることが出来なくて下を向いていた。


「……本当に反省してる?」


「……はい」


「今度からはちゃんとオレに話す?」


「…はい」


僕は先輩の質問に答えるだけで精一杯だった。


今度は先輩がなにも言わなくなったので恐る恐る顔をあげてみた。


そうすると、突然頭に重みを感じ、伊織に撫でられているのだとわかった。


「ホントに…利都ちゃんは」


そう言って先輩は苦笑いをしていた。


僕は本当にいたたまれなくなって、もう一度謝った。



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