【長編】鉛の空
『ろ……、だ……で……か……?』

ウォンの声がノイズに掻き消されつつも聞こえてくる。

「ああ。大丈夫だ」

こちらの答えも、ほとんど届いてはいないだろうが、何も言わないよりはましだ。

なんにしても、視界を回復しないことには、勝負にならない。

人間は、感覚器官を視覚に特化して進化した生物なのだ。

見えなければ、ただ動くことすら困難になる。
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