キラめく堕天使
ふと頭の中に映像が割り込んできた。
管に繋がれたオレの体の前で、泣いている母。
そうだった。
オレの体は今、生死の境をさまよっているんだ。
それでも、その身体に戻りたいとは、どうしても、思えない。
だから...
その映像を、自分の意思で閉ざした。
それから、空っぽだった家から外へ出た。
気のせいか、頭痛はさっきよりましになっている。
人間界の空気に慣れてきたとか。
時間のつぶし方を思いつかなくて、何度か来たことのある喫茶店に入ってみた。
店にいた女の子が、チラリと振り返った。
目をそらし、それから、もう一度振り返った。
オレは顔を背けた。
二度見されるほど、面白い顔でもないと思うけど。
思って、今は自分の姿じゃないことを思い出した。
恐る恐る、女の子の方を見る。
けっこう可愛いその彼女が、ニッコリと微笑みかけてきた。
うわ。
だ。
綺麗な姿に生まれ変われるというコトは、こういうことなのか。
何か、うれしい。
ただ、この頭痛がもうあと少し、マシになってくれさえすれば。
いつもより丁寧に扱われていることを感じながら、ウエイトレスのお姉さんに紅茶を頼んむ。
姿が違えば、待遇までが変わるんだ。
窓の外を見た。
セーラー服を着た女の子が、自分を見て、そっと隣の友達に何か言うのが見えた。