キラめく堕天使
「妬まれてる、んだ。魂って、そんな重要なの?」
傷が痛みそうだから、喋らせないほうがいい。そう思ってるのに、つい訊いてしまった。
「うん。悪魔や魔王にとっては、大事なの。人間でいうと、うーんっと、財産のようなものかな。
神様に仕える人の魂なんて、もっと価値があるみたい。
でも、そんな人でさえ、フィックスに惑わされちゃう人もいるんだよ」
そうか。より価値の高い魂さえたやすく手に入れてしまうことができるカラダなんだな。
そりゃ、妬まれるよな。
オレは横の壁際のベッドにかけられた、白い布をひっぺがした。
「背中、見せて。ルナ」
ルナは潤んだ目を、じっとオレにむけた。
見られたくないのかな。
けれど、どうしていいかわからずに見つめ返しいていると、ルナがふっと目を伏せた。
大人しく後ろを向く。
「フィックスって、ズルい」
ルナが呟く。
こちらを向いた、白い背中が、血にまみれている。
そして、その血を噴出している傷口は、ぱっくりと口を開けていた。
こんな状態で、喋ってたのか。
オレはさっさと手当てをしなかった自分を、激しく後悔しながら、ルナの身体に、裂いた布を巻きつけた。
「フィックスには、魂を一杯手に入れようなんて欲はないんだよ。フィックスにそんな知能はないんだから。
でも、そのフィックスに、人間が入っちゃうと... ズルいんだよ」
白い布をきつく巻きつけても、下から血がにじんできている。
ルナは、傍に落ちている自分の服を掴むと、包帯の上に、着た。
ふわふわした、羽毛で出来たような、服。
翼がなくなっても、それはやっぱりルナに似合っている。
「嫌な予感がするんだ」
ルナは可愛い顔を青ざめさせて言った。