キラめく堕天使
オレは叫んでその部屋に乱入していた。
振り返った老婆は、その肌に、木の年輪を刻んだバケモノで。
うわ。
恐怖から頭に血が昇る。
手に持っていた短剣に気づいて、さやから引き抜く。
引き抜きざまに、老婆に刃先を叩き付けた。
「ひっ」
老婆は短く悲鳴をあげると、すとんと崩れ落ちた。
切った、のか?
切っ先に、何の感触もなかった。
崩れ落ちた布ががさごそ動いて、中から猫ほどの大きさのねずみが飛び出して走り去った。
老婆の正体が、あれ、だったのか?
オレはねずみが出て行くのをちらっと目で追うと、ルナを見た。
ルナは老婆がいなくなっても、グラスを唇につけ、中身を飲もうとしていた。
オレはそばに寄って、グラスを上から指で押さえ、ルナの唇から遠ざけた。
「どうして?」
ルナが言った。