キラめく堕天使
彼女は言うと、両手を膝の上に乗せてオレが座るのを待っていた。

 スツールは、思いがけず柔らかだった。

「私は、『本の番人』シュロスよ。あっちはラビ。あなたは?」

オレはちょっと戸惑って、

「ジュラ。フィックスの体を借りている人間」

 シュロスは笑った。

「だからなのね。フィックスの臭いがする割に、フィックスにはありえないほどの知能を感じるのは」

 オレは照れて、額をぽりぽり掻いた。

 が、よく考えてみると、オレの知能が高いと褒められたわけじゃないのだ。

フィックスはほとんど知能を持たないから。それよりは知能を感じるってだけなのだ。

 オレは照れた自分が恥ずかしくて、また額を掻いた。

「そして、知能が高い割に、森で生きていく術も知らないみたいだから、助けちゃったの」

 シュロスは上目使いにオレを見た。

 もしかして、気に入られてる?

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