揺れる、山茶花






「なんでもいいよ。名前なんて、そう重要な事じゃないでしょう。僕はあなたを勝手にお姉さんと呼んでるし、だからお姉さんも、好きに呼んでみて。そうしたら、フェアでしょう」

私と君の余裕の度合いからして既にアンフェアじゃないかな。

じゃあ、君は今日から赤鼻ね。

赤鼻は嬉しそうに笑った

「赤鼻なんて呼ばれるの初めて。サンタクロースのトナカイみたい」

くすくすと笑う。



赤鼻が笑うと全然嫌味に聞こえない。

私と赤鼻しか人間はいない公園で、私と赤鼻は肩を寄せあってお喋りした。

たわいないこと。


好きな給食のメニューとか、しゃっくりの仕方とか、トマトに砂糖を掛けるかとか、昼寝するならハンモック派か草原派か、とか。


昨日、泣いてた理由とか。

正直、最後のひとつは話したくなかったけれど、無邪気な表情は本当に小さい子供みたいで、私は大人ぶってみせる。

就活に失敗し続けるフリーターの虚勢なんて、所詮恥のかきすて。





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